盗聴に「盗聴罪」はない?適用される法律とは
意外に思われるかもしれませんが、単に室内の会話を録音する「盗聴」そのものを直接罰する法律は日本にありません。しかし、盗聴に至る過程や盗聴器の設置行為、聞き取った内容の利用方法によって、以下の複数の法律に触れる可能性があります。
住居侵入罪(刑法130条)
盗聴器や盗撮カメラを仕掛けるために、他人の住居や敷地に無断で侵入した場合は住居侵入罪が成立します。法定刑は3年以下の懲役または10万円以下の罰金(刑法130条)。賃貸物件やオフィスへの無断侵入も対象です。実際の盗聴・盗撮事件では、この住居侵入罪が最も適用されやすい罪名の一つです。
電波法違反
盗聴器の多くは微弱な電波を使って音声を飛ばしますが、法定の基準を超える電波を発する無線設備を無許可で使用した場合、電波法に違反する可能性があります。電波法違反は1年以下の懲役または100万円以下の罰金が定められています(電波法110条)。
有線電気通信法・不正アクセス禁止法
電話回線に機器を接続して通話を傍受する行為は有線電気通信法に、Wi-Fiカメラやスマート機器に不正アクセスして映像を取得する行為は不正アクセス禁止法に触れる可能性があります。近年はIoT機器を悪用した盗撮・盗聴が増えており、これらの法律の重要性が増しています。
軽犯罪法・各都道府県の迷惑防止条例
正当な理由なく他人の住居等をのぞき見る行為は軽犯罪法1条23号に該当します。また、公共の場やトイレ・更衣室などでの盗撮は、各都道府県の迷惑防止条例で規制されてきました。
盗撮を直接罰する「撮影罪」とは?2023年の法改正
従来、盗撮は迷惑防止条例で取り締まられてきましたが、条例は都道府県ごとに内容が異なり、規制の隙間が問題視されていました。そこで2023年(令和5年)7月13日に施行された「性的姿態撮影等処罰法(撮影罪)」により、盗撮が全国一律の刑法犯として明確に規制されるようになりました。
この法律では、正当な理由なく人の性的な部位や下着などを密かに撮影する行為に対し、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金を科すと定めています。撮影したデータの提供・保管・記録の作成も処罰対象で、盗撮に対する法規制は大きく強化されました。
自分の家に盗聴器を仕掛けるのは合法?グレーゾーンの実態
「自宅は自分の所有物だから、家族の会話を録音しても違法ではないのでは」と考える人もいます。実際、自分の居住空間で自分が当事者となる会話を録音することは、原則として違法にはなりにくいとされます。
しかし注意すべきグレーゾーンがあります。
- 配偶者の車や持ち物への設置:夫婦であっても、相手の車内や個人の持ち物に無断でGPSや録音機器を設置する行為は、プライバシー侵害として民事上の損害賠償責任を問われる可能性があります。
- 賃貸物件:退去後の部屋や他人が居住する部屋への設置は住居侵入・器物損壊などに該当し得ます。
- 証拠としての利用:違法な手段で得た録音・録画は、裁判での証拠能力が制限される場合があります。
配偶者の行動を調べたい場合は、自力で機器を仕掛けるのではなく、探偵事務所による適法な素行調査やGPS調査を検討するほうが、法的リスクを避けられます。GPS機器の利用についてはGPS調査のルールも参考にしてください。
盗聴器・盗撮カメラを発見したらどうする?対処の手順
盗聴器や盗撮カメラを発見した、あるいは疑いがある場合、慌てて自分で機器を撤去するのは得策ではありません。証拠の保全や犯人特定のためにも、正しい順序で対応することが重要です。
以下の手順で冷静に対処しましょう。