GPS調査は合法か?結論から解説
結論として、GPSの利用は「誰が」「誰の物に」「対象者本人の同意があるか」で適法性が大きく変わります。単純に「GPS=違法」でも「GPS=合法」でもありませんが、近年の裁判例では、対象者本人の承諾なくGPSで位置情報を取得する行為はプライバシー侵害(不法行為)と評価される傾向が強まっています。
重要な前提として、警察による無令状のGPS捜査を「強制の処分であり、令状がなければ違法」と判断した最高裁判決は、最大判平成29年(2017年)3月15日 大法廷によるものです。これはあくまで刑事手続き上の「捜査」に関する判断であり、私人(一般市民)や探偵によるGPS利用を直接規律するものではありません。私人のGPS利用を規制するのは、主に次の3つの法令です。
- ストーカー行為等の規制等に関する法律(ストーカー規制法)
- 各都道府県の迷惑防止条例
- 民法上の不法行為(プライバシー侵害)
2021年5月のストーカー規制法改正では、相手の承諾なくGPS機器等を用いて位置情報を取得する行為が新たに規制対象に加わりました。これにより、GPSを使った位置情報の無断取得は、状況によって刑事罰の対象となり得ます。
探偵はGPSを使って調査できる?探偵業法の観点
探偵業は「探偵業の業務の適正化に関する法律(探偵業法)」に基づく届出制の事業です。警察庁の統計によると、探偵業の届出業者数は令和6年末時点で約7,098件とされています(警察庁公表資料に基づく。一次統計の詳細は各年の公表資料をご確認ください)。
探偵業法そのものにGPS利用を直接禁じる条文はありません。ただし探偵業法第6条は「他の法令において禁止又は制限されている行為を、探偵業務として行ってはならない」旨を定めています。つまり、ストーカー規制法や迷惑防止条例に違反するGPS利用、あるいはプライバシー侵害となるGPS利用は、探偵であっても当然に違法となります。
実務上、多くの適正な探偵事務所は、GPSを「尾行・張り込みを補助する参考情報」として限定的に用いるにとどめ、GPSの位置情報だけを浮気の証拠とすることはありません。GPS単体では「その場所に車があった」ことしか示せず、誰と何をしていたかを立証できないためです。GPSと尾行・撮影を組み合わせた調査についてはGPS調査の詳細ページや浮気調査の完全ガイドも参考にしてください。
GPS利用が違法・適法になる境界線とは?
GPS利用の適法性を分ける最大のポイントは、対象物の名義(所有関係)ではなく、対象者本人の同意の有無です。近年の裁判例では、たとえ夫婦共有物であっても、対象者本人の承諾なくGPSで位置情報を継続取得した場合はプライバシー侵害にあたり得ると判断されています。
実際、探偵によるGPS位置情報の取得がプライバシー侵害(不法行為)と認定され、損害賠償(計44万円)の支払いを命じられた裁判例(旭川地裁令和6年3月22日、控訴審の札幌高裁令和7年1月31日で確定)があります。この判断では、車両の名義が誰であるかにかかわらず、本人の承諾なく行動を継続的に把握したこと自体が違法性の根拠とされました。
以下に典型的なケースを整理しますが、「名義が共有だから安全」という考え方は成り立たない点に注意してください。
ポイントは、対象者本人の承諾がないまま位置情報を「継続的に」取得する行為は、対象物の名義にかかわらず違法性が高いということです。逆に、相手の明確な同意がある場合は適法性が高まります。
なお、ここでの整理はあくまで一般的な目安であり、個別具体的な事案では弁護士や公安委員会への確認が不可欠です。
2017年最高裁大法廷判決が探偵業に与えた影響は?
GPS捜査に関する最高裁判決(最大判平成29年3月15日 大法廷)は、警察が令状なくGPSを用いて対象者を継続監視することを「強制の処分であり、令状がなければ違法」と判断しました。
この判決の射程は刑事捜査であり、私人には直接適用されません。しかし、裁判所が「継続的な位置情報の取得は個人の行動を網羅的に把握し、プライバシーを大きく侵害する」と評価した点は、民事の不法行為判断にも影響を及ぼしています。
実際、前述の旭川地裁・札幌高裁の事例のように、探偵や依頼者が無断でGPSを設置したことが原因で、逆に相手方からプライバシー侵害を理由に損害賠償を請求されるケースが確定判決として存在します。慰謝料や証拠を得るための調査が、かえって自らの立場を悪化させるリスクがあるのです。浮気の証拠が裁判で有効となる条件については不倫の証拠が法廷で認められる条件も併せて確認しておくとよいでしょう。
依頼前に確認すべきポイント
GPSを含む調査を探偵に依頼する際は、契約前に次の点を必ず確認しましょう。